第147回(2022年度秋季)学術講演会 詳細プログラム | ||||||
11月16日(水) 第1会場(大会議室,1F) | ||||||
セッション | [メタンハイドレート][CO2 1] | |||||
座長 | 佐藤浩章(電力中央研究所) | |||||
11月16日 | 10:00〜10:20
CO2地中貯留において断層の安定性・健全性の評価は必要不可欠である.断層のすべりに対する臨界間隙圧の推定にはモール・クーロンの破壊基準が広く用いられているが,CO2圧入による間隙圧上昇のみが考慮され,CO2圧入に伴う局所的な応力場の擾乱は無視する場合が多い.本論では,流動-力学連成解析技術(TOUGH-FLAC)を活用し,応力場の擾乱を考慮した断層安定性評価の方法を提案すると共に,これを公開データ(In Salahフィールド)に適用して効果を検証した.また,CO2圧入中の地表変動記録(InSAR)とのヒストリーマッチングを実施し,モニタリングデータの有益性について考察した.この一連の内容について発表する.
|
1) CO2圧入フィールドにおける断層安定性評価への流動‐力学連成解析の適用例 | ||||
○小沢 光幸(1),柏原 功治(2),大沼
巧(1) 1:地科研,2:石油資源 |
||||||
11月16日 | 10:20〜10:40
宇宙線ミュオンは物体内部の密度推定に利用されており、検出器の小型化によりその応用は地下にも及んでいる。一方、地下探査でよく利用される弾性波も密度に感度を持ち、これらを統合的に利用することが考えられ、ガス飽和度評価などの物理特性の推定に有用な密度や弾性定数の推定が期待される。そこで、密度とLamé定数をモデルパラメータとして、初動走時と密度の相関を考慮した宇宙線ミュオンと弾性波の統合解析について検討した。その結果、密度、P波、S波のスローネスの代わりに、密度、Lamé定数をモデルパラメータとして用いることで、Lamé定数の推定結果が改善されることが示唆された。
|
2) 宇宙線ミュオンと弾性波を利用した統合解析における最適化手法の数値的検討 | ||||
○児玉 匡史(1),横田 俊之(2),松島
潤(3),アリ モハメド・ブチャラ ファテ(4),田中 宏幸(5),金 政浩(6) 1:産総研, 東大・院・新領域,2:産総研,3:東大・院・新領域,4:ハリファ大学,5:東大・地震研,6:九大・院・総理工 |
||||||
11月16日 | 10:40〜11:00
亀裂内に賦存するハイドレートの貯留層は、世界中に広く分布している。音響減衰情報は、異なる相(すなわち、ガス、水、固相)を持つ物質とそれらの細孔系への飽和充填に高い感度を示し、ハイドレート資源の正確な評価に重要な役割を果たす。ただし、亀裂の存在は減衰特性、複雑な流体効果およびハイドレートを含む貯留層の弾性散乱に大きな異方性を生じさせる可能性があるが現状未解明である。本研究では、シミュレーションベースの岩石物理モデリングにより、亀裂内ハイドレート充填の音響減衰応答を調べた。減衰特性の異方性と、さまざまなハイドレートの飽和度とその亀裂内での存在形態による違いを示した。結果、亀裂媒体の音響減衰に対するハイドレートの飽和度と形態の影響に関する新しい洞察を提供し、ハイドレート評価の精度向上に貢献する。
|
3) Simulation-based rock physics modeling of acoustic attenuation responses in a fracture filled with hydrates | ||||
○Shengbiao Liu(1),Matsushima
Jun・Xiaoliang Wang・Yaoming Che(2) 1:The University of Tokyo/China University of Petroleum (East China),2:The University of Tokyo |
||||||
11月16日 | 11:00〜11:20
せん断波と摩擦の間の関連付けを使用して、メタンハイドレートを含む堆積物 (MHBS) におけるS波減衰特性を評価することはこれまであまり行われてこなかった。本研究では、現在受け入れられている摩擦理論による予測データと矛盾することを示した後、3相の接触線上の動摩擦を考慮する。複素応力関数の方法により、摩擦と減衰の関係をモデル化してシミュレートし、楕円形の断面の亀裂を持つ岩を構築し、液体で部分的に飽和させたモデルを考える。次に、せん断波が岩盤全体に伝播する過程において、水滴が引き伸ばされ、動摩擦に逆らって接触線が動くとき、接触線摩擦の定量化については、いくつかの説がある。岩体の各点の歪みを計算するために、Muskhelishvili の理論を参照し、任意に指定された遠方場応力と液体の圧力の下でひずみを取得することにより摩擦減衰係数を得て、最終的にMHBSでせん断波伝播方程式に統合する。
|
4) 動摩擦を考慮した部分飽和亀裂を通過するせん断波の減衰シミュレーション | ||||
○牛 梓函(ニウ ズハン)・松島 潤(1) 1:東京大学 |
||||||
11月16日 | 11:20〜11:40
物理探査データに対して機械学習やAIの適用事例報告は盛んに議論されている.坂口ほか(2022)では三次元物理探査データに対する適用可能性が示唆され,その有効性が明らかとなった.しかしながら,適用されたデータは限定的であり,より複雑な地質構造を含むデータに対しての評価が望まれる.そのため,本研究では,実際の地質解釈現場で使用されているデータに対して適用を行い,そのワークフローと結果について議論を行う.また,本ワークフローを解釈現場で効率的に使用するためのシステム化への課題を明らかにする.これらの結果をとりまとめ,社会実装に向けての必要な事項を議論する.
|
5) 反射法地震探査データへの畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)の適用とシステム化 | ||||
○坂口 弘訓・高市 和義・児玉 総司・下野 祐典・清水
恒子(1),石鍋 祥平・中山 貴隆(2) 1:CTC,2:JOGMEC |
||||||
セッション | [地震1][火山] | |||||
座長 | 落合努(神奈川大学) | |||||
11月16日 | 13:00〜13:20
東北電力東通サイトにおいて2013年11月〜2015年11月に稠密高感度地震計観測が実施された。この観測で取得された3成分の自然地震波形記録を用いてレシーバ関数解析および地震波干渉法(自己相関解析)による地下構造推定を行った。観測された地震の数は441個で、太平洋スラブ沈み込みによるプレート境界地震が大勢を占める。解析の結果、レシーバ関数には強い到来方向依存性が見られ、傾斜層構造の存在の可能性が示唆された。レシーバ関数記録、P波およびS波の反射記録から作成した深度断面には深さ2.5〜3 kmに共通した構造の存在が認められた。それぞれ地震波形記録の異なる成分の異なる時間窓部分の波形から抽出した情報が共通した構造の特徴を示すことは興味深い。既存の構造探査結果および速度構造モデルとの対比からこの境界面は地震基盤に相当すると解釈している。
|
6) 東通サイトにおける稠密地震観測記録のレシーバ関数および地震波干渉法解析による基盤推定 | ||||
○渡辺 俊樹(1),阿部 信太郎・澤田
義博(2) 1:名大,2:地震予知振興会 |
||||||
11月16日 | 13:20〜13:40
本論は,八丈島の減衰特性について二重スペクトル比法を用いて推定したものである.二重スペクトル比法は,複数の観測点で観測された複数の地震記録を用いることで震源特性とサイト増幅特性を取り除き,伝播経路特性,すなわち減衰特性のみを抽出する手法である.解析には2019年9月から2020年3月まで八丈島および八丈小島において計46地点で行われた臨時稠密地震観測データを用いた.計241組の観測点ペアのデータに対して二重スペクトル比の算定を行い、逆解析の初期モデルとしてBPTによるQ構造を推定した。その結果,東山は西山よりもQ値が高い傾向があり,西山では,2002年にダイクが貫入した山体中央部付近で相対的に低減衰であった.
|
7) 稠密地震観測データを用いた二重スペクトル比法による八丈島の減衰特性(その2) | ||||
○渡邊 詩子・東 宏幸・小田 義也(1),渡辺
俊樹(2) 1:都立大,2:名大 |
||||||
11月16日 | 13:40〜14:00
2002年に, 八丈島付近では火山活動が活発化したことが報告されている(木股ほか, 2004). このため2019年度と2021年度に, 東京都立大学探査工学研究室では活火山に認定されている八丈島に地震計を設置して, 臨時地震観測を行った. 目的は, 発生した地震を検出し, 地震波伝播を利用して火山の地下構造を推定するためである. 地下構造を精度良く解析するには, 正確な多くの地震波初動が必要である. そのため我々は深層学習を適用し, 地震波検測の自動化を図ってきた. 深層学習を適用することで, 労力を削減できると同時に, 手動では見つけることが困難な地震を検出できる可能性がある. 本発表では、2019年の八丈島臨時地震観測データ全てに対してEQ transformerを用いて地震波初動の自動検測を行いその適用性を検討した. その結果, 手動検測結果と比較して、混同行列の再現率で約94%という高い値を得ることができた. また, EQ transformerで検出した到着時刻と手動で検出した到着時刻の差は, P波とS波でそれぞれ平均0.01sと0.09sであることがわかった.
|
8) EQ transformerを用いた深層学習による地震波自動検測-7ヶ月間の八丈島臨時地震観測データへの適用性の検討- | ||||
○國政 光・東 宏幸・小田
義也(1),渡辺俊樹(2),松岡俊文(3) 1:都立大,2:名大,3:深田地質研 |
||||||
11月16日 | 14:00〜14:20
1914年桜島地震における鹿児島市東部の推定震度は最大震度6強で空間的な変動が大きく,この地域の地盤構造が影響を与えていると考えられる.そこで,鹿児島市東部地域の地盤増幅特性の評価を行うため,アレイ微動探査,表面波探査,電気探査を実施した.調査地点はK-NET鹿児島,旧洲崎町,玉里台第一公園,武公園の4箇所である。なお,今回は微動探査データから求めた位相速度とH/Vスペクトル比の結果と考察を報告する.位相速度を比較すると,玉里台第一公園や武公園よりもK-NET鹿児島や旧洲崎町の方が表層地盤のS波速度が小さいことが推察される.また,K-NET鹿児島と旧洲崎町はともに鹿児島湾に面した埋立地だが,H/Vスペクトル比を比較すると異なる特徴が見られ,地盤構造に差異があると考えられる.さらに,いずれの地点もH/Vスペクトル比のピークが際立っておらず,地盤のコントラストは強くないことが示唆される.
|
9) 鹿児島市東部における地盤震動特性評価のための現地調査 | ||||
○森脇 美沙・津野 靖士・是永 将宏(1),山中
浩明(2) 1:鉄道総研,2:東工大 |
||||||
11月16日 | 14:20〜14:40
KiK-net山元において、微動探査に基づく地盤構造探査を実施した。KiK-net山元は、2011年東北地方太平洋沖地震や2022年3月に発生した地震において1000galを超える最大加速度を記録している。地震記録の孔中と地表のスペクトル比、微動H/Vスペクトル、微動の位相速度を用いた同時逆解析を実施し、地表から地震基盤までのS波速度構造を推定した。周辺で実施した微動H/V測定や反射法地震探査結果との比較を行った。推定したS波速度構造モデルを用いて、等価線形解析を行い2011年東北地方太平洋沖地震の観測波形の再現を行った結果、高周波数領域の振幅の低下を再現できた。
|
10) 微動探査によるKiK-net山元における地盤構造探査 | ||||
○鈴木 晴彦・眞鍋俊平(1) 1:応用地質 |
||||||
11月16日 | 14:40〜15:00
地表に近い岩盤の減衰評価は,地震の震源そのものの調査・分析や特定サイトの地震動評価,また貯留層のモニタリングへの活用など,地震学と工学の両分野で関心を集めるテーマである.室内試験による減衰は,原位置のボアホール地震観測から測定された減衰よりも小さいことが指摘され,これは相対的に均質なサンプルを使用する室内試験では内部減衰のみが得られるのに対し,原位置では亀裂や不均質に伴う散乱等による減衰を含んだeffective dampingが計測されるからと考えられている.そこで,本発表では,岩石コアを用いた超音波計測による弾性波測定データから,Q値を測定する実際的な方法,原位置と室内での減衰測定結果の差異の主要因と考えられる亀裂,さらには原位置同様の水の存在が減衰評価に及ぼす影響について,通常の岩石コアおよび同コアに対して人工的な亀裂,水中浸漬をそれぞれ施した超音波試験の結果に基づき検証した結果を報告する.
|
11) 超音波計測データを用いた岩石コアの減衰測定と亀裂および水飽和が減衰評価に及ぼす影響 | ||||
○佐藤 浩章・岡田 哲実(1) 1:電中研 |
||||||
11月16日(水) 第2会場(小会議室,2F) | ||||||
セッション | [土木1][防災1] | |||||
座長 | 小森省吾(産業技術総合研究所) | |||||
11月16日 | 10:00〜10:20
筆者らは、山形県沿岸の庄内平野を対象に常時微動観測やボーリングデータを用いた地盤構造の推定に関する研究を進めている。ここでは、オープンデータよりボーリングデータを収集し、その地点で微動アレイ探査を実施し、地盤構造の推定精度の検証をおこなった。ボーリングデータのN値から推定するS波構造と微動アレイ探査によるS波構造では部分的にやや乖離が見られたが、概ね整合的な結果であった。この乖離については、N値からS波構造への推定誤差などの影響など複数の要因が考えられる。これらの結果から、ボーリングデータと微動アレイ探査を組合せて地盤構造を推定することは有用であることが確認できた。今後は、具体的なモデル作成や、作成したモデルの検証などを進める予定である。
|
28) 庄内平野を対象としたボーリングデータと微動アレイ探査の比較 | ||||
○落合 努・荏本 孝久(1),小田 義也・太田
光(2),三辻 和弥(3),先名 重樹(4) 1:神奈川大学,2:東京都立大学,3:山形大学,4:防災科学技術研究所 |
||||||
11月16日 | 10:20〜10:40
酸性火成岩の山腹斜面では,風化した火成岩が風化層や土層を形成し,豪雨を伴い斜面崩壊が高頻度で発生する.土層厚や風化変質帯分布は斜面崩壊リスクの評価をする上で重要な情報である.本研究では2018年の集中豪雨により斜面崩壊が発生した広島県南部にて,流紋岩風化帯の2地点を対象に,土層厚推定および変質帯抽出を目的とした構造調査を実施した.土層厚推定を目的に斜面で実施した表面波探査では,表層2-3 mに明瞭な速度境界を得た.簡易貫入試験値(Nc値)は3 m以浅で10以下,速度境界付近で急激に大きくなっており,表面波探査より斜面の土層厚分布を捉えることが出来た.また,別の地点で変質帯抽出を目的としたドローン電磁探査及び電気探査を行い,電気探査では変質帯位置に低比抵抗構造を得た.一方,対地高度70mという条件下において,幅10m程度の変質帯をドローン電磁探査で捉えることは出来なかったが,現時点での適用限界を示すことが出来た.
|
29) 広島県白亜紀流紋岩を対象とした構造調査事例 ―斜面土層厚推定及び風化変質帯抽出を目的とした調査― | ||||
○森藤 遥平・平田 康人・窪田 健二(1) 1:電中研 |
||||||
11月16日 | 10:40〜11:00
橋梁架替箇所のボーリング孔内から近隣の温泉旅館源泉と同等の温泉水が確認された。そのため工事箇所周辺の地質構造・温泉水分布状況を把握し、今後の工事による源泉への影響を確実に回避する目的で電気探査を実施した。探査の結果調査地における岩相ならびに温泉分布領域が明らかとなり、今後の施工における有益な資料を作成することが出来た。
|
30) 温泉旅館源泉近傍の橋梁架替予定地における電気探査実施例 | ||||
○坂西 啓一郎(1),藤岡 毅・佐藤
拓実(2) 1:モニー物探(株),2:北陽建設(株) |
||||||
11月16日 | 11:00〜11:20
ドローンの飛行実験による軌道データと周波数変調連続波(FMCW)SARを用いたシミュレーションを組み合わせ,1つの目標点からの反射波を想定したSingle Look Complex (SLC)画像を作成した.フライト実験では,RTKの軌道誤差のばらつきが小さいことを確認し,Point Positioning(PP)とReal Time Kinematic(RTK)を用いた軌道データをシミュレーションに組み込み,両者のSLC画像を比較した.その結果,RTKは高い測位精度とホバリング精度を実現できるため,SAR搭載ドローンに有効であることが確認された.また,高精度なSLC画像を作成するためには,軌道データのばらつきの程度が重要であることが示唆された.今後,様々な条件下での実証実験を行い,実測で得られるSLC画像の向上を図る必要がある.
|
31) 実観測に向けたFMCWSAR搭載ドローンのシミュレーションの開発とその応用 | ||||
○重光 勇太朗・石塚 師也・林 為人(1) 1:京大 |
||||||
11月16日 | 11:20〜11:40
ボーリング位置での地層境界深度・支持層境界深度を空間的に補間し、広域の情報を推定する場合の推定誤差を表現する方法のひとつとして、物理探査結果を併用した逐次シミュレーションを用いた方法を検討した。今回は、適当な支持層標高の分布を仮定し、等間隔にいくつかの地点の標高データをボーリングデータとして抜き出した。また、仮定した分布を平滑化して物理探査結果を模擬し、数値シミュレーション用データを作成した。ボーリング位置での標高を既知データとし、物理探査結果を用いた逐次シミュレーションにより100個の分布を生成することで、その分散を推定値の誤差分布と考えることができる。ボーリング位置から離れるに従って推定誤差は大きくなるが、それだけでなく、物理探査結果の急変点でより誤差が大きくなる。この事は物理探査結果が反映され、有用に活用されているものと考える。
|
32) 物理探査結果と逐次シミュレーションによる地盤調査結果の推定誤差の提示 | ||||
○小西 千里(1) 1:応用地質株式会社 |
||||||
セッション | [岩盤][地下水] | |||||
座長 | 柏原功治(石油資源開発株式会社) | |||||
11月16日 | 13:00〜13:20
複数の活断層が分布している地域において、活断層周辺の歪み蓄積過程や岩盤破壊過程を把握することは、内陸型地震発生や地形形成のプロセスを理解するために必要である。従来から数々の模型実験や数値実験が行われているが、2つの断層の接合部に関して、岩盤内部の亀裂・歪み分布を詳細に議論した例はない。本研究では、三次元個別要素法(3D-DEM)を用いて、周囲に比べて脆弱な領域(weak zone)を含む岩盤がどのように破壊を起こすか数値シミュレーションを行った。その結果、平行する2本のweak zoneを持つモデルでは、地下深部から浅部へと破壊が進展する傾向がみられた。またシミュレーションで得られた徘徊分布と、実際の活断層周辺の地下比抵抗構造には類似性も見られた。
|
33) 弱帯を含む岩盤における破壊過程の数値シミュレーション | ||||
○岡田 一真・川原 征一郎・後藤 忠徳(1) 1:兵庫県立大学 |
||||||
11月16日 | 13:20〜13:40
高レベル放射性廃棄物を地下深部に処分する際,坑道等の掘削に伴い掘削影響領域が発生する.掘削影響領域では,地圧や岩盤の強度との関係による岩盤の損傷,間隙水圧の低下や脱ガスの影響などによる水飽和度の低下など,岩盤に様々な変化が生じると考えられている.これは,放射性核種の移行挙動に影響する可能性があることから,掘削影響領域の範囲や経時変化を把握することは重要である.著者らは,日本原子力研究開発機構(原子力機構)が北海道幌延町に所有する幌延深地層研究施設の調査坑道を利用して,坑道掘削に伴う岩盤の変化を捉えることを目的とした調査を実施した.本稿では,坑道掘削から10年以上にわたって継続的に調査してきた結果を報告する.
|
34) 水平坑道掘削に伴う掘削影響領域の長期挙動の調査−幌延深地層研究施設における検討− | ||||
○窪田 健二・森藤 遥平(1),松井
裕哉(2) 1:電中研,2:原子力機構 |
||||||
11月16日 | 13:40〜14:00
盛土内部の地下水位が高いと地震に対して不安定となり,法面崩壊を生じる危険があるため地下水位を把握することは重要である.延長が長い道路盛土において地下水の観測に適した位置を絞り込む手段として旧地形判読や造成記録により地下水流動分布の概要を把握する方法があるが,旧地形の精度や造成記録の情報量には限りがある.そこで本研究では,より詳細に絞り込む手段として,法尻から地下水の湧出を確認した道路盛土で電気探査を実施した.解析の結果,地表付近で最も低比抵抗を呈する箇所は,旧地形から推定した尾根に位置し,供給される地下水はこれを避けて流路を形成していると推測する.地下水は浅部の比較的高比抵抗構造を呈する経路で浸透していると考えられ,旧地形の切り盛り境界付近が主要な浸透経路であり,地下水観測井設置の好適地と判断した.地下水観測井の設置位置決定の手法として,地形判読と電気探査の組合せは有効であると考えられる.
|
35) 湧水が確認された道路盛土の電気探査による地下水の浸透経路の把握 | ||||
○大石 佑輔・尾西 恭亮・加藤 俊二・東 拓生・佐々木
直也・鈴木 望夢(1) 1:土研 |
||||||
11月16日 | 14:00〜14:20
本研究はドローン空中電磁(D-EM)探査により比抵抗と誘電率から地下水を探査することを目的とする。まず,土壌とレンガのサンプルの比抵抗を1.0〜160 kHzの周波数の電流により測定し,試料が周波数依存効果(FE)を有することを確認した。一方,本研究で実施したD-EM探査は時間領域であるが,周波数分解により周波数領域に変換すれば,信号には数10 kHz以上の高周波数の電磁波が使用されている。よって,D-EM探査で得た比抵抗にはFEを含むと考えられる。さらに,等価回路によればFEは地面の誘電率によると考えられる。そこで,比抵抗と誘電率を計算できるD-EM探査の1次元逆解析ソフトウェアを開発して,徳島の有瀬の地すべり,高知の室戸の急な山地のデータにより検証した。その結果,比抵抗と誘電率に基づくD-EM探査は湿潤帯を特定でき,地下水探査にとって有効な方法であることが分かった。
|
36) ドローン空中電磁による地下水探査 ー誘電率を用いた地下湿潤域の検出ー | ||||
○城森 明・城森 敦善・十山 哲也(1),長谷川
修一・野々村 敦子(2),結城 洋一(3),河戸 克志(4),木下 篤彦(5) 1:ネオサイエンス,2:香川大,3:応用地質,4:大日本コンサルタント,5:国総研 |
||||||
11月16日 | 14:20〜14:40
著者らは東北電力鰍フ東通サイトにおいて,高感度速度計を用いた高密度観測により,地盤の不整形性の検討を行い,基準点と観測点のスペクトル比のバラツキ(SD)が周波数に依存することを明らかにした.ここで,すべての観測点を用いた場合(All)と基準点に類似した観測点のみを用いた場合(Rock)の2ケースを検討したが,AllとRockのSD特性に明確な差異が見られた.その要因として,未固結層の非線形挙動の可能性がある.そこで,当該サイトで得られた観測波形の小振幅域における未固結層の地震時挙動を調べた結果, 4×10-8 t〜 2×10-4のせん断ひずみにおいて非線形挙動を示すものの,卓越周波数に影響を与えるほどではないことが判明した.
|
37) 未固結層の小振幅地震入力時における非線形挙動 | ||||
○澤田 義博・田澤 芳博(1) 1:地震予知振興会 |
||||||
11月16日 | 14:40〜15:00
微動信号で励起される表面波を利用し、SPACの時間変化のモニタリングを行った。本研究では、静岡県西部(森町)の地すべり地帯に、SPAC法の典型的なアレイ構成(中心と半径4,8,16mの3つの同心円上の三角形)に従って10個の地震計を配置 した地震アレイを用い、2020年10月から2022年5月まで連続観測を実施した。地震計のデータは単一のGPS時計に同期して100Hzサンプリングした。解析は一日ごとのSPACを計算し、一年半のSPACの平均を標準として、SPACの時間 変化を検討した。その結果、週末と平日と祝日でSPACに違いが見られ、微動信号の発生源が変化しているためであると推測された。また、降雨量が多い場合、観 測地点横の沢が増水し、SPACに大きな影響を与えることがわかった。また、SPAC は全体的に季節によって変化した。これらの影響を極力排除した結果、降雨によ る高周波数領域のSPACが減少することを見出した、地下のS波速度の低下を反映し、降水による地下水位上昇によるものと推定できる。
|
38) 微動信号の時間変化検出に向けた表面波モニタリング | ||||
○馮 晨・山岡 耕春(1),生田 領野(2),辻
修平(3),渡辺俊樹・小池 遥之(1),大庭 拓武(2) 1:名古屋大学,2:静岡大学,3:海洋研究開発機構 |
||||||
11月16日(水) コアタイム:第1会場・SpatialChat,展示:廊下・ロビー・オンラインフォルダ | ||||||
セッション | [ポスター(コアタイム)] | |||||
座長 | 児玉匡史(産業技術総合研究所) | |||||
11月16日 | 15:20〜17:20
本研究では,三陸沖に設置されたケーブル式地震・津波観測システムを利用したDASから自然地震データを取り出し解析を行った.得られたS波記録に対してスペクトルホワイトニングを用いた自己相関解析を適用することで,50kmのケーブルに沿って10m毎に反射トレースを推定した.低周波数帯と高周波数帯の異なる2つのバンドパスフィルターを適用することで,それぞれ深部の地下構造や浅部の地下構造を推定することが出来た.特に浅部の地下構造に関しては,雑微動を利用した先行研究よりも高い解像度で反射断面図を得ることが出来た.この結果の違いは,自然地震のエネルギーが雑微動よりも高周波数帯で大きいことに起因すると考えられる.本研究は,DAS測定により得られた自然地震データを用いた高解像度地下構造推定の可能性を示すものである.
|
P-1) DAS高密度データで記録された自然地震に対して地震波干渉法を適用:海域反射断面図の構築 | ||||
○坂上 雄士(1),辻 健(2),池田
達紀(1) 1:九大,2:東大 |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
月極域には水氷が存在し, ロケット燃料として惑星探査に利用できることが示唆されている. しかし, 水氷の正確な分布や量については、明らかになっていない. 地中レーダーは, 地下浅部にある水氷を高分解能で検出でき, 有望な探査手法として期待されている. 本研究では, 地中レーダーを用いて水氷の探査深度を決定するため, 月のレゴリスシミュラントの含水率と電気伝導度及び誘電率の関係を実験とシミュレーションの両面から測定・推定した. 実験では, 凍結に起因する電気伝導度の急激な低下が観察された. また、シミュレーションでは、氷分布の不均一性が増すと、Archieの式に従うまでの含水率が増加することが分かった。さらに, 電気伝導度の値が急激に増加する部分があった。これは、氷の連結度の増加に伴うものと考えられる。以上より、デジタル岩石を用いたシミュレーションは、岩石の氷の分布による電気伝導度の違いを調べるのに有効な手法であると言える。
|
P-2) 含水率の異なるレゴリスシミュラントの電気伝導度の測定及び推定 | ||||
○輪倉 光矢(1),澤山 和貴(2),辻 健(3),池田
達紀(1) 1:九大,2:京大地熱研,3:東大 |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
日本での3次元速度構造モデルは,複数のものが提案されており,その妥当性や性能についての検証およびモデルの修正・改変についての取り組みもなされている.そこで,Kasamatsu et al.(2021)で示されている一連の解析をより容易に,また,多くのユーザーが実行できるようにするために,Pythonによるデータ処理・解析のコード開発を行うこととした.現段階では,コード作成・改変の初期の過程であるが,Pythonの特性を活かしたデータ処理とインタラクティブ操作を可能とする汎用的なコードの開発を行っていくことを目標としている.
|
P-3) 波形逆解析に関する計算コードの共有化への試み | ||||
○山田 伸之(1),笠松 健太郎(2),山中
浩明(3) 1:高知大,2:鹿島建設,3:東工大 |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
2018年7月の豪雨により、徳島県三好市の有瀬地区では大規模な地すべりが発生した。これにより、人家や道路などに大きな被害が出た。地すべり対策工事を効果的に行うには、地下水の流入経路を平面的に明らかにすることが必要である。また、地下水位が上がりやすい箇所を明らかにし、そこで集中的に地下水を排除する必要がある。本研究では、有瀬地区のI-3ブロックにおいて、2021年に、出水期(7月23日)と乾燥期(11月26日)の2時期にドローン空中電磁探査(Drone Airborne TEM)を行った。また空中電磁探査によって得られた比抵抗データから、2時期の比抵抗平面図を作成し、これらの差分を取ることにより、出水期の地下水の挙動を明らかにした。
|
P-4) ドローン空中電磁探査を用いた徳島県有瀬地区地すべりにおける地盤の比抵抗特性 | ||||
○木下 篤彦・竹下 航(1),福井 慧(2),山越
隆雄・中谷 洋明(1),後藤 寛和(3),河戸 克志(4),城森 明(5) 1:国総研,2:四国山地砂防事務所,3:日本工営,4:大日本コンサルタント,5:ネオサイエンス |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
従来の物理探査データの逆解析は、一般に偏微分行列が必要であり、観測されたデータと推定しようとしているモデルの間には、数学的もしくは物理的な関係が必要であった。これに対して近年利用が広がっている機械学習は、モデルをデータから統計的に推定することが可能であり、データとモデルの間の物理的な関係や偏微分行列の計算が必要ない。物理探査の解析に機械学習を導入すれば、逆解析の計算時間の短縮したり初期モデル依存性を低減したりすると同時に、例えば土質判別や微地形区分など、物理探査データと関連のない不連続な情報を解析に用いることも可能になる可能性がある。本論文では、機械学習手法の一つであるニューラルネットワークについてまとめ、簡単なニューラルネットワークを物理探査の解析や解釈に適用した例を紹介する。
|
P-5) 物理探査データの解析・解釈に対するニューラルネットワークの適用 | ||||
○林 宏一(1) 1:応用地質/Geometrics |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
近年,局地的な豪雨や地震による水害や土砂災害が多発している. 土砂災害については,発災直後の被災地をいち早く把握することが重要であるが,時間をおいて発生する災害を予測することも非常に重要である.本研究で開発した崩壊地検出システムは,衛星画像の解像度などの問題により小規模な被災範囲を検出するにはまだ問題が多いが,比較的規模の大きい土砂災害を検知できる可能性が高い.また,それは同時に同スケールの未崩壊領域も検出できる可能性が高いことを示している.今後,早期の被害状況把握につながる未崩壊領域抽出の可能性を視野に入れ、システムの改善・実装を進めていく予定である.
|
P-6) 衛星データを用いた土砂災害の早期被害把握について | ||||
○中村 貴子・松島 潤(1),六川
修一(2) 1:東大,2:防災科研 |
||||||
11月16日 | 15:20〜17:20
「平滑化」,「クラスタリング」の2つの拘束条件を用いて構築されているクラスタリング・インバージョンに,cross-gradient最小化を第3の拘束条件として追加導入して,その拡張性を検討した.cross-gradient最小化を追加導入することで,顕著ではないが,よりcompactな解が得られるようになった.このような拡張は目的関数に関連する項を加えるだけで行え,計算コストの増大も最小限にとどめられる.このことは,今後,地下の物性分布を表す新しい数学的モデルが提案された場合,それを拘束条件として追加導入して信頼性の向上を図れる可能性を示している.ここでは,cross-gradient最小化拘束の追加導入による効果と,それを追加導入した拡張型クラスタリング・インバージョンを空中重力偏差測定から得られたGdd(Gzz)と空中磁気探査データのジョイント・インバージョンに適用した結果を報告する.
|
P-7) geological differentationを目的としたポテンシャル量のクラスタリング・インバージョンの開発 (その3) 第3の拘束条件の導入による拡張性の検討 | ||||
○中山 英二(1) 1:所属なし |
||||||
11月17日(木) 第1会場(大会議室,1F) | ||||||
セッション | [土木2][防災2] | |||||
座長 | 是永将宏(鉄道総合技術研究所) | |||||
11月17日 | 10:00〜10:20
米国カリフォルニア州リッチモンドにおいて、三成分地震計と分散型音響計測(DAS)を用いて表面波探査および微動アレイ探査の比較測定を行った。測定は掘削したトレンチに数種の異なるファイバーケーブルをいくつかの異なる深度に設定して行った。比較のために、三成分の固有周波数2Hzの速度型地震計(ジオフォン)を地表に設置した。表面波探査の起振にはハンマーを用い、数日間の常時微動を測定した。2Hzのジオフォンで測定した表面波探査のデータを歪の時刻歴に変換して、DASで測定したデータと定量的に比較したところ、両者は良く一致した。ジオフォンとDASにより測定した表面波探査と微動アレイ探査のデータから、位相シフト法および空間自己相関関数法により分散曲線を計算した。DASの測定から得られた分散曲線は、表面波探査では4~35 Hz、微動アレイ探査では2~20 Hzの周波数範囲で、ファイバーケーブルと平行な成分のジオフォンから得られたものと概ね一致した。微動アレイ探査の解析の結果、通信用の一般のファイバーケーブルや、地表においたファイバーケーブルに土を被せた場合でも、ジオフォンと整合する分散曲線が得られた。これらの測定結果は、DASは様々な目的の振動モニタリングに適用できることを示唆している。
|
12) 三成分地震計と分散型音響計測(DAS)により得られた表面波探査および微動アレイ探査のデータの定量的な比較 | ||||
○林 宏一(1),野中 隼人(2),ピーター・
ハバード,(3),横田 泰宏・伊達 健介・升元 一彦(2),平 貴昭・曽我 健一(3) 1:応用地質/Geometrics,2:鹿島建設,3:UCバークレー |
||||||
11月17日 | 10:20〜10:40
2019年東日本台風(2019年台風19号)により新潟県中越地域で観測された脈動について,2018年台風21号が日本海を通過した際の脈動と比較分析を行った.2018年台風21号では,台風が日本海に出てから振幅が大きくなったが,2019年台風19号では台風が上陸する前から徐々に大きくなり,台風が海上に出てから振幅が最大となった.卓越周期は,2018年台風21号では周期5秒を超えることはなかったが,2019年台風19号では,台風が海上に抜けた後に卓越周期6秒の脈動が観測された.新潟県内の波浪データと比較すると2018年台風21号では対応が良いが,2019年台風19号における周期6秒の卓越は対応がつかない.中越地域の連続観測記録を用いて周波数・波数スペクトル解析を行うと,周期6秒の波が東側から伝播していることが示され,太平洋沖で発生した波が伝播していると考えても矛盾がないことがわかった.
|
13) 2019年東日本台風通過時に新潟県中越地域で観測された周期6秒の脈動 | ||||
○植竹 富一・引間 和人・新村 明広(1) 1:東京電力ホールディングス |
||||||
11月17日 | 10:40〜11:00
トルコ共和国のブルサ市は,マルマラ海の南東側のブルサ盆地を中心とした地域にある。同市は,オスマン帝国の初代の首都でもあり,様々な時代の歴史建築物が多く存在している。1855年には,ブルサ地域においてM7.1の地震が発生し,歴史建築物も含めて多くの建物被害が生じた。この地震による地震動特性を明らかにすることは,今後のブルサ市の地震防災だけでなく,歴史建築物の保存にも重要であると考えられる。本研究では,ブルサ市における地震動特性を理解するために,強震観測点での地震記録による地盤増幅特性の逆解析から表層および深部地盤の1次元S波速度構造を明らかにすることを試みた。深部地盤の深さは,盆地中心部で厚く,周縁部では薄くなっていることを示した。盆地中心部では,低S波速度の表層も存在している。これらの地盤モデルを用いて,ブルサ盆地の地盤増幅特性の特徴を明らかにした。
|
14) トルコ・ブルサ盆地の地盤増幅特性の逆解析による地盤モデルの推定 | ||||
○山中 浩明(1),三宅 弘恵(2),守田
正志(3),佐藤 大樹(1),笠松 健太郎(4) 1:東工大,2:東大地震研,3:横浜国大,4:鹿島建設技研 |
||||||
11月17日 | 11:00〜11:20
物理探査ではフルウェーブインバージョンによく用いられている随伴状態法を,走時トモグラフィの逆解析に対して適用した.本解析法では,一般の解析で行われている波線追跡を必要としないことが特徴である.
|
15) 随伴状態法による地震探査走時トモグラフィの逆解析 | ||||
○岡田 信(1) 1:株式会社日本地下探査 |
||||||
11月17日 | 11:20〜11:40
鉛直地表震源に対する地震波探査では震源近傍域にノイズコーンと称される大振幅の波群がしばしば観測される.そのノイズコーン中に独立したSV反射波比定相が認められることがあり,それを処理することでSV反射断面を構築できることを示してきた.またその断面が同一測線上で実施したSH波反射法探査の時間断面やVSPプロファイルとも整合的であることを示してきた.しかしショットギャザ上においてSH波反射相の走時とSV反射波比定相のそれとが必ずしも一致しない場合があった.そこで既往探査データを再検討するとともに浅部地盤構造モデルを想定して差分法波動シミュレーションを実施した.その結果,数値計算によってもSV反射波を再現できることが分かった.特にVp/Vs速度コントラストの大きい未固結浅部地盤に対しては,従来ノイズとして除去されてきたノイズコーン中のSV反射波を処理することにより,浅部構造に対する貴重な追加情報を得ることが可能であることを再確認した.このSV反射波を説明するS波速度構造モデルを想定しDWMによる波形合成を実施した.合成波形と実測波形よく合致し,従来のActive表面波探査では推定が困難であった深さ15m程度以深のS波速度構造を同じ測定波形データセットを用いて推定できることを示す.
|
16) 地震波探査記録中のノイズコーン内のSV反射波相の特徴と活用 | ||||
○稲崎 富士(1),林 宏一(2) 1:フリー,2:Geometrics/応用地質 |
||||||
セッション | [インフラ維持管理][埋設物] | |||||
座長 | 坂西啓一郎(モニー物探株式会社) | |||||
11月17日 | 13:00〜13:20
周波数領域の電磁探査は、周波数を変えることで異なる深度の比抵抗情報を得ることができる手法である。その中には、異なる複数の周波数を一度に測定することのできる多周波数電磁探査システムがあり、その一つに、一度に最大10周波数以上の電磁場の送受信が可能である米国Geophex社製のGEM-2がある。しかしながら、周波数の数が増えると、S/N比が低下するという問題があり、一方で、一度に測定する周波数の数を減らせば、複数回測定する必要がある。多くの周波数を用いて幅広い深度の情報を得るために、データ品質を保持し、少ない測定回数で効率的な測定を行うことが重要である。そこで本研究では、効率的な測定手順を検討するために、一度に測定する周波数の数や組み合わせを変えて測定を行い、得られたデータについて定量的に評価した。その結果、周波数の組み合わせを変えても信号強度はあまり変化がないが、標準偏差は測定周波数の数に依存することが分かった。
|
17) 多周波数型電磁探査装置のキャリブレーションおよび異なる周波数の組み合わせによる測定データの評価 | ||||
○梅澤 良介・光畑 裕司・横田 俊之(1) 1:産総研 |
||||||
11月17日 | 13:20〜13:40
車載型地中レーダを使って道路縦断方向に敷設された埋設管を検出するため,測線密度やアンテナ方向を議論する実験を行った.実験の結果,車載アンテナの向きを変えることは,コストに見合った成果が得られないことを示唆した.縦断方向に埋設された管の検出率は,測線密度を増加させることによって改善することがわかったが,一度に車両を使って多くの測線を測定することには限界がある.したがって,縦断方向に埋設された管を検出するためには,複数回の走行から取得されたレーダデータを合成する必要がある.高精度な測位をするため,車両にMMSを搭載し,ある走行のレーザ点群データを他の走行のレーザ点群データに重ねるために移動する補正値を取得した.その結果,地中レーダの横断画像を合成することに成功した.今後は,埋設管の検出能力を高度化させるため,データ合成技術を改良していく予定である.
|
18) 車載型地中レーダによる道路縦断方向に敷設された埋設管の検出 | ||||
○青池 邦夫・山下 善弘・中山 文也・岡田 聡・米澤
秀登(1) 1:応用地質 |
||||||
11月17日 | 13:40〜14:00
マルチチャンネル地中レーダを用いた橋梁床版中の水分分布の推定方法を示す。床版下面からの反射波の伝播速度と床版厚を用いて誘電率と含水率を推定する方法は、参照実測記録によく適合した。また,床版下面からの反射波が他の信号と明瞭に識別され,安定した自動処理解析が可能となった。また、橋梁床版に適用した地中レーダの代表的な信号を整理し、床版解析の要点をあわせて示した。
|
19) RC床版の滞水分布の地中レーダによる把握 | ||||
○尾西 恭亮(1),小林 貴幸(2),大石
佑輔(1) 1:土研,2:応用地質 |
||||||
11月17日 | 14:00〜14:20
ロックフィルダムの堤体部では,突き出た岩盤付近で不同沈下が生じやすく,大規模地震時に生じたせん断変形が発生することがある.このせん断変形域を通じて,さらに貯水による堤体浸食の発生が懸念される.この過程において細粒分が徐々に流出し,高透水域が生じると考えられる.このような背景の中,電気探査法により堤体中の高透水域の位置を特定することが期待された.ロックフィルダムの定期点検に伴う貯水位低下時に電気探査法を行った結果,予想される右岸アバット地中擁壁近傍に,比抵抗変化が顕著な領域を検出した.高透水域は細粒分が流出して生成されると仮定して,砂と粘土よりなる土壌に対して,Kozeny-Carmanの式とGloverの式から,高透水域の透水係数,比抵抗,流路断面積を推定した.次に,これらの推定値に基づき高透水域を想定した比抵抗モデルを用いて数値シミュレーションを行った.その結果,貯水位変動に伴う顕著な比抵抗変化域は,実データによる解析結果とほぼ整合した.以上より,アバット近傍の岩盤傾斜の急変部上部に,せん断変形に伴い細粒分が流出した高透水域が存在すると推定された.
|
20) 電気探査法によるロックフィルダム堤体内高透水域のモニタリング | ||||
○鈴木 浩一(1),大西 豪昭・萬寶 徹郎・尾留川
剛・高畠 正治(2) 1:北大,2:電源開発 |
||||||
11月17日 | 14:20〜14:40
音波照射加振とレーザドップラ振動計を用いた非接触音響探査法は,既に様々な実コンクリート構造物において検証実験が行われており,その有効性が確認されている.一方で手法自体の改善により,研究開始当初に比べると,短時間で広い領域の探査が実施可能となっている.そこで,今回は現状の非接触音響探査法を用いて,既存のコンクリート供試体における再検証実験を行った.
|
21) 非破壊検査のための非接触音響探査法に関する研究, -コンクリート供試体に対する再適用例- | ||||
○杉本 恒美・杉本 和子(1),歌川 紀之・黒田
千歳(2) 1:桐蔭横浜大学,2:佐藤工業 |
||||||
セッション | 特別講演 | |||||
座長 | 光畑 裕司 副会長(産業技術総合研究所) | |||||
11月17日 | 15:00〜16:00 | 物理探査による深部構造イメージングと沈み込み帯の地球科学 | ||||
梅田 浩司 氏(弘前大学) | ||||||
11月17日 | 16:00〜17:00 | 弘前公園の桜の魅力について | ||||
橋場 真紀子 氏(弘前市都市整備部 公園緑地課 管理係 主幹 桜守) | ||||||
11月17日(木) 第2会場(小会議室,2F) | ||||||
セッション | [地熱] | |||||
座長 | 渡辺俊樹(名古屋大学) | |||||
11月17日 | 10:00〜10:20
近年の温暖化による地表面温度(GST)上昇を地下の岩石・堆積物の熱伝導率を推定するための「熱源」として考え、地下構造が既知である坑井温度データから地下熱伝導率、熱流量及び過去のGST変化を推定する方法を報告する。この方法を苫小牧CCS大規模実証試験サイトで得られた坑井温度データに適用した。さらに、地下構造が不明の坑井温度データにこの方法を適用するため、坑井温度データから地下構造を推定する方法を考案し、苫小牧CCS大規模実証試験サイトの坑井温度データに適用してその有用性を検証した。謝辞:経済産業省が北海道苫小牧市で実施したCCS大規模実証試験の観測井で得られた岩相データ及び坑井温度データを使用した。
|
39) 温暖化による地表面温度変化を利用した地下熱伝導率と熱流量の推定 | ||||
○後藤 秀作(1),山野 誠(2) 1:産総研,2:東大地震研 |
||||||
11月17日 | 10:20〜10:40
鬼首地熱地帯においては,JOGMECは各種物理探鉱を実施している。その内,反射法地震探査からは,鬼首カルデラの地質形成が捉えられ,一連の断裂帯やカルデラ基底面へのマグマの水平貫入などが解釈できた。HELITEM探査は旧鬼首地熱発電所付近では実施されておらず,ドローンによる空中磁気探査を検討中である。その実施に先立ち,火山活動の詳細掌握のための磁気探査取得・データ解析の有益性の確認のため、既存データについて通常のデータ解析,インバージョンや重力偏差・極磁力相関性解析を実施した。これらの解析結果は,カルデラ内には伏在する浅部溶岩堆積があり,この溶岩を供給する火道,貫入岩体の位置が特定でき,線形分布することが示され,一連の断裂系が横ずれ断層であることが想起された。
|
40) 鬼首地熱地帯における空中磁気探査 | ||||
○水谷 滋樹(1) 1:KGE |
||||||
11月17日 | 10:40〜11:00
地熱地域では従来より、MT探査によって地熱変質層の分布が明瞭に可視化されており、地熱貯留槽の分布について議論がなされてきた。しかしながら、MT探査の観測点間隔は一般に数百m以上であり、地熱変質層の詳細な分布については明らかではなかった。本研究では地熱地域において、50〜200m程度の観測点間隔で稠密AMT探査を実施し、地熱変質層と思われる低比抵抗体の詳細分布を可視化した。その結果、地熱流体の上昇経路や、天水の涵養に伴うと思われる比抵抗構造を得ることに成功した。このような情報は地熱エネルギー開発に大きく貢献するものと考えられる。
|
41) 稠密AMT探査から推測される地熱流体の移動経路 | ||||
○後藤 忠徳・山下 凪(1) 1:兵庫県立大学 |
||||||
11月17日 | 11:00〜11:20
米国Fenton Hillにおける高温岩体発電のテストサイトの地表・地中に複数のジオフォンが設置され,1983年の水圧破砕試験時の微小地震記録を利用して各種研究がおこなわれた.近年,当時のデータを新たに現代的SAC形式に変換する作業がすすめられているが,現在の所はまだ地震規模情報が含まれていない.数点の観測点のほとんどが一成分であることから,本研究では少ない観測点記録を用いた地震規模の簡便な推定を試みる.2観測点GT1, EE1で収録された一成分速度波形記録のS直達波スペクトルを積分して得た変位スペクトルを,理論変位スペクトルと比較し,低周波振幅レベルとコーナー周波数を推定した.これらを用いて地震規模をそれぞれ推定したところ,低周波振幅レベルを用いた地震規模推定値は2観測点で同程度になった.一方,コーナー周波数を用いると,推定された地震規模は2観測点の間で異なっていた.これはディレクティビティや放射特性の影響と考えられる.
|
42) コーナー周波数を用いた米国高温岩体発電テストサイトにおける微小地震のマグニチュード推定 | ||||
○吉光 奈奈(1),Michael
Fehler(2) 1:京都大学,2:MIT |
||||||
11月17日 | 11:20〜11:40
2022年大分県滝上においてDASを用いた地熱調査を実施した.大分地熱の蒸気生産井のTP-2の深さ2000 mまでに光ファイバーを挿入しDTSによる温度プロファイルとDASによる地震動の測定を行った.TP-2坑井の周囲の12か所で起震をおこなった.東西断面の速度構造からほぼ南北の断層があることを確認した.反射波のマイグレーション処理を行い,反射面が1 kmと2.5 kmにあることが分かった.これはS−P変換から推定される変換波の生じる深さと整合的である.
|
43) 滝上地熱フィールドの地熱坑井を用いたDAS地熱探査 | ||||
○笠原 順三・羽佐田 葉子(1),古谷 茂継・島ア
壮大(2),大沼 寛(1),三ケ田 均(3),藤瀬 吉博(1) 1:エンジニアリング協会,2:出光興産(株),3:京大工 |
||||||
セッション | [資源探査1][石油・天然ガス] | |||||
座長 | 小沢光幸(株式会社地球科学総合研究所) | |||||
11月17日 | 13:00〜13:20
石油ガス田の大部分は炭化水素源岩の空間分布を予測することが重要である。リーシュイサグは、中国で最も有望な沖合の石油とガス探査地域のうちの1つです。しかし,岩盤の知識は,以前の掘削のいくつかの場所に限られているため,全地域の岩盤分布を決定する必要がある。震源岩石の予測精度を制御するために堆積相解析を用いた非線形地震探査データを統合した方法について述べた。また、我々の研究領域、リーシュイ・サグにこの方法を適用した。この地域の震源岩の地震反射は低周波数と高振幅で特徴づけられる。東サブサグとサザンササグの根源岩は、堆積物の底から遠く離れているため、根源岩の厚さは200 m以下であるので薄い。西subsagの根源岩の厚さは全領域で最大で500 mに達した。文献の結果を比較することにより,この方法はポテンシャル源岩の空間分布に関する信頼できる情報を提供できると考えた。
|
44)
音響相関と地震属性を用いた根源岩厚算定のための事例研究統合法 A case study: Combining acoustic correlation and seismic attributes to calculate source rocks in Lishui Sag, China |
||||
○李 娜(1),松島 潤(2),張 金亮・栾 旭伟・陳
涛(3) 1:北師大 & 東大,2:東大,3:北師大 |
||||||
11月17日 | 13:20〜13:40
ここでは振動信号の変調について考察し、線形振動と一般的な非線形振動の信号を比較する。 振幅スペクトルと波形相関の分析を利用して、異なる信号によって引き起こされる効果の詳細な違いを実証し議論する。バイブロサイス信号の性能を向上させるための非線形バイブロサイスの設計について論じる。コウモリのエコーロケーションシステムと、情報を獲得する際のコウモリのエコーロケーション・コールの潜在的な特徴に着想を得て、コウモリのエコーロケーション・コールを追求する。反響除去とスペクトル減算により、エコーロケーション・コールの周波数変調の変化パターンを取得し、コウモリの振動信号を数理的に表現する。
|
45) コウモリのエコーロケーションに学ぶ非線形バイブロサイス波形の設計 | ||||
○徐 望傑・松島 潤(1) 1:東大・院・新領域 |
||||||
11月17日 | 13:40〜14:00
震探相(サイスミックファシス)の解析は地震探査データにみられる反射波列の形態的特徴を分類する地震探査データ解釈作業の一環であり、これまで人による解釈により実施されてきた。一方、近年の地震探査データは三次元でのデータ収録も多く,データ全体に対してこうした解釈作業を行うには膨大な作業が必要となる。本研究では画像認識の分野で実績のあるCNNを用いた教師あり学習を用いて、震探相分類のワークフローを検討している。現在、画像分類の分野で高い精度を出しているEfficientNet(Tan and Le (2019))を用いて震探相分類の検討を実施しており、その結果について紹介する。
|
46) CNNを用いた震探相分類の検討 | ||||
○中山 貴隆・石鍋 祥平・石川 和明・石丸
卓哉(1) 1:JOGMEC |
||||||
11月17日 | 14:00〜14:20
これまでの研究では、宇宙線ミュー粒子と地震波の連成解析を提案し、両者の数値データを用いたジョイントインバージョン手法の開発を試みてきた。 開発したジョイントインバージョンの適用性と性能を検証するため、ミュー粒子と地震波を組み合わせた室内実験を行い、開発したジョイントインバージョンを実験室データに適用する。本論文では、ミューオン観測のための室内実験の実現可能性を調査し、実験室でのミュオン測定の適用可能性と、ミュオンを観測するための最適な実験室環境をさらに調査する必要性について述べる。 次に、ミューオンと超音波の 1D 融合実験室測定の概念設計の概要を説明し、3D アプローチに対する 1D アプローチの利点を強調する。
|
47) 室内実験スケールでの宇宙線ミュオンと弾性波の融合測定 | ||||
○松島 潤(1),児玉 匡史(2),アリ
モハメド・ブチャラ ファテ(3),田中 宏幸(4),金 政浩(5),横田 俊之(2),鈴木 誠(6) 1:東大・院・新領域,2:産総研,3:ハリファ大学,4:東大・地震研,5:九大・院・総理工,6:東大・院・工学系 |
||||||
11月17日 | 14:20〜14:40
通常地下の岩石には流体が充満した亀裂や割れ目が存在するが、地震波が通過すると亀裂や割れ目の形状が変形するため、これらの亀裂や割れ目に圧力差が生じることになる。当然のことながら、流体内の圧力差により、地震波による流体の流れが発生する可能性もある。これらの微視的な流体の流れ(例えば、squirt flow)は、地震波の減衰と速度の拡散を引き起こす可能性があることが知られている。これらの地震波エネルギー損失に基づいて、地下物性を評価できる可能性があるが、これまでの研究のほとんどは理想化された単純なモデルに基づいている。この講演では、アブダビ油田で得られたデジタルコアサンプルに基づいた3次元数値シミュレーションを行うにあたり、応力-ひずみ関係式とナビエストークス方程式を組み合わせて実施する。なお、これら2つの方程式を固体領域と流体領域でそれぞれ解法する方法を採用した。
|
48) Simulation-based rock physics modeling in three-dimensional digital core rocks for wave-induced fluid flow in fractured media | ||||
○王 暁亮・松島 潤(1),アリ モハメド・ブチャラ
ファテ(2) 1:東京大学,2:ハリーファ大学 |
||||||
11月18日(金) 第1会場(大会議室,1F) | ||||||
セッション | [地震2][防災3] | |||||
座長 | 鈴木晴彦(応用地質株式会社) | |||||
11月18日 | 10:00〜10:20
阿蘇カルデラ北部は、平成28 年熊本地震(MJMA 7.3)において大きな被害を受けた。阿蘇カルデラ北西部には、KiK-net 阿蘇(防災科学技術研究所)が設置されているが、2012年から現在に至るまで休止しており、熊本地震における強震記録は観測されていない。周辺地域の地震被害の分析を行うためには別途、本震時の地震動を推定しなければならない。そこで、地震動を適切に評価するため微動アレイ観測を行い、地震基盤までのS波速度構造の推定を行うとともに、阿蘇カルデラ北部における地盤震動特性の検討を行った。その結果、SPAC法により精度の高い分散曲線が得られ、それに基づきS波速度構造を推定することができた。このモデルに基づくレイリー波基本モードの楕円率は、当地点のR/Vスペクトルと比較的良い対応を示し、さらにK-NET一の宮周辺の既往研究のデータと比較すると、地質図やブーゲー重力異常の傾向とも概ね対応することが示された。
|
22) 微動アレイ観測に基づくKiK-net阿蘇のS波速度構造の推定 | ||||
○富ア 脩・原 輝・重藤 迪子・神野
達夫(1) 1:九州大学 |
||||||
11月18日 | 10:20〜10:40
1968年2月21日に、宮崎、鹿児島、熊本の県境付近で発生したえびの地震(Mj6.1)では、比較的狭い地域である旧えびの町内でも、地域によって被害が大きく異なっていたことが報告されている。本研究では、この被害の違いの要因を検討するために、えびの地震において被害が見られなかった地域(EBN)と、特に被害が大きかった地域(MSK)の2地点で微動アレイ観測を行い、S波速度構造の推定を行うとともに、地盤震動特性の検討を行った。推定した地下構造を比較したところ、EBNはMSKよりも表層のS波速度が小さく、堆積層が厚い軟弱地盤であることが推察できた。また、1次元地盤増幅率は、2地点ともに低周波数成分が増幅する地下構造となっていることが示された
|
23) 微動アレイ観測に基づく1968年えびの地震の被災地周辺のS波速度構造の推定 | ||||
○原 輝・富崎 脩・重藤 迪子・神野
達夫(1) 1:九州大学 |
||||||
11月18日 | 10:40〜11:00
雑微動から抽出した表面波の伝播特性から関東盆地の3次元S波速度構造を推定した.本研究では表面波であるレイリー波とラブ波の高次モードの分散曲線を推定することに成功しており,高次モードを利用することで,基本モードのみのインバージョンに比べて少なくとも50%以上,推定精度を向上した.推定した速度構造は観測した表面波分散曲線をより良く説明しており,本研究で推定したモデルは地震被害予測に貢献できると考えられる.
|
24) 複数モードの表面波を用いた関東盆地の3次元S波速度構造の推定 | ||||
○二宮 啓(1),池田 達紀(2),辻
健(3) 1:産総研,2:九大,3:東大 |
||||||
11月18日 | 11:00〜11:20
2016年熊本地震本震時に特徴的な強震動記録が得られた熊本平野北端部の万日山周辺地域において,表層地盤構造の空間的な変化を把握することを目的としたアレー微動探査,表面波探査と単点微動測定を実施した.万日山と隣接する花岡山の山地部に位置している観測点では,レイリー波の位相速度が大きく,万日山の東側および南東側の境界部や平地部の地点では,4〜5Hz程度まで低い位相速度が観測された.また,推定された表層地盤のS波速度から,山地部と,境界部・平地部との間では,基盤層の深さに顕著な差異があることを明らかにした.この結果は,山地部から境界部・平地部にかけて浅部S波速度構造が急変していることを示している.さらに単点微動測定によるH/Vスペクトルの結果からも,同様の傾向が示された.
|
25) 稠密な微動アレー探査と表面波探査による熊本市万日山周辺の浅部S波速度構造推定 | ||||
○是永 将宏・津野 靖士(1),山中
浩明(2) 1:鉄道総研,2:東工大 |
||||||
11月18日 | 11:20〜11:40
神奈川県鶴見区の鹿島建設保有の敷地で,微生物代謝を利用した地盤固化試験が行われた.本検討では,当該敷地を対象に,波形逆解析による二次元S波速度構造推定を行い,地盤固化試験効果の検出を試みた.地盤を1 m×1 mのブロック状に分割し,波形逆解析により各ブロックのS波速度を推定する手法を検討した.未知数の多い,複雑なS波速度構造モデルを評価しているため,計測波形は良く再現される結果を得た.地盤固化試験が行われた位置のS波速度Vsは170 m/s程度と,周囲のVs=140 m/s程度に対してやや大きく推定された.この結果は,別途行われたPS検層結果と良く対応しており,波形逆解析により地盤固化試験の効果を検出できたと言える.表層地盤のS波速度は局所的に異なっており,当該敷地は複雑なS波速度構造を有することが分かった.
|
26) 波形逆解析による表層地盤の二次元S波速度構造の推定 | ||||
○笠松 健太郎(1),山中 浩明(2),安達 直人・引田
智樹(1),秀川 貴彦(3) 1:鹿島技術研究所,2:東工大,3:鹿島構造設計本部 |
||||||
11月18日 | 11:40〜12:00
都市域の活断層を対象とした反射法地震探査では、道路あるいは宅地などの制約により本格的な3次元探査を行うことが現実的に困難であり、専ら2次元探査が適用されている。筆者らは、奈良盆地東縁断層帯を対象とした反射法地震探査を行う機会を得た。この探査において、通常の反射法地震探査に加えて受振のみを行う測線を設置し、横方向のイメージングの拡充を行った。地形情報から断層の存在が指摘されている方向に2次元的な地質構造が延長していることが明らかとなった。複数の受振ラインを設置することにより、都市域においても3次元的な地質構造に関する把握が可能であるものと考えられる。
|
27) 都市域活断層を対象としたPoor Man’s 3D反射法地震探査の適用 | ||||
○山田 浩二・鳥家 充裕・小割 啓史・岡本
茂(1),岩田 知孝(2) 1:阪神コンサルタンツ,2:京大防災研 |
||||||
11月18日(金) 第2会場(小会議室,2F) | ||||||
セッション | [資源探査2][CO2 2][金属] | |||||
座長 | 尾西恭亮(土木研究所) | |||||
11月18日 | 10:00〜10:20
二酸化炭素地中貯留(CCS)におけるCO2圧入状況の貯留層モニタリングは,貯留層からの漏洩がないことや,長期安定性の確保を確認するのに重要である。CCSに伴った貯留層変形は、地表で上下変動が観測されるほど大きくなるケースも多く、貯留層の伸縮は貯留システムの健全性 (integrity) にも大きく影響するため,そのジオメカニクス的な扱いを系統立てて整理することは重要な課題である。本報告では、最初にCCSに伴う変形の大きな要素となる多孔質弾性体における岩石の4つの圧縮率(compressibility)について整理する。次にCCSにおける貯留層変形の過程について解説し,圧縮率の不確定性について議論する。同じ孔隙率であっても岩石の基質の在り方によって圧縮率には大きなばらつきがある。上記議論に基づいた伸縮量の不確定性が5倍以上にも及ぶ。
|
49) CCSモニタリングにおけるジオメカニクスの圧縮率に関する考察 | ||||
○高橋 明久・大沼 巧・松島 潤(1) 1:東大・院・新領域 |
||||||
11月18日 | 10:20〜10:40
CO2地中貯留において遮蔽層の健全性は重要な評価項目であるが、評価に必要なデータは取得されていない場合が多い。そこで、インデンテーション試験を適用してカッティングス試料から遮蔽層の力学特性を推定する方法を検討した。炭酸塩岩油田で採集されたカッティングスを利用し、インデンテーション試験と鉱物分析を行った。その結果、遮蔽層の弾性率は粘土鉱物量に支配され、ガンマ線検層等を活用した評価の可能性が示された。また同一の遮蔽層内にも粘土鉱物量が40%よりも低く弾性率の高い部分の存在する可能性が示された。遮蔽層内に弾性率の高い薄層が存在すれば、部分的な地層破壊圧の上昇と遮蔽層の健全性向上が期待される。そこで、粘土鉱物量が少ない領域の弾性率に着目して、更なる解釈を試みた。岩石物理モデルとの比較の結果、測定値のばらつきはセメント化の有無で整理される可能性が示された。また、インデンテーション試験の測定値は岩石の巨視的な弾性率に近づく可能性がある。インデンテーション試験の活用が期待される結果となった。
|
50) 岩石物理モデルに基づくインデンテーション試験データの解釈 〜CCSのための遮蔽層評価に向けて〜 | ||||
○柏原 功治(1),長野 優羽(2) 1:JAPEX,2:JOGMEC |
||||||
11月18日 | 10:40〜11:00
航行型AUV「Deep1」による海底写真画像撮影試験の際に,同時にフラックスゲート3成分磁力計および自然電位計測を目的とする電位差計を搭載して,静岡市三保沖にて既知の沈船調査試験を実施した.Deep1にはマルチビーム測深器(MBES)が常設されており,調査範囲の精密地形も同時に取得した.沈船直上部付近では明瞭な磁気異常と自然電位異常が観測され,磁気異常では船体の南側で正,北側で負の異常が,電位差計では船体の船首部で負,船尾部で正の自然電位異常が観測された.このことから磁気異常は主に地球磁場による誘導磁場であり,また自然電位では船体が水平方向に分極していることが確認された.一方電位差計にはDeep1の挙動に応じた変化も認められ,それらの変化は海流や変針時の角速度による起電力で説明される.
|
51) AUV"Deep1"による沈船調査で得られた地磁気および自然電位について | ||||
○久保田 隆二(1),杉本 慎吾(2),後藤 慎二・立花
冬威(1),増田 康佑・浅野 佑香・大辻 由希(3) 1:川崎地質,2:JOGMEC/川崎地質,3:深田サルベージ建設 |
||||||
11月18日 | 11:00〜11:20
分極曲線からIP効果を支配するパラメータがどのようなものであるかを明らかにすることを目的とし, IP効果を示す黄鉄鉱を作用電極とした3極法の直流分極測定を実施した. 陽極分極測定(アノード測定)では光照射時と暗時の両方の分極特性(電流-電位曲線)において, ターフェルの式に従う領域(電位範囲 約0.65〜0.75 V), それより電位が小さい領域(電位範囲 約0.45〜0.6 V), 電位が大きい領域(電位範囲 約0.8〜1.0 V)の3領域が抽出され, これは既往研究と同様の結果であった. 電位が小さい領域では, 電位走査速度に応じて光照射時と暗時とで分極特性に違いが認められた. これは半導体である黄鉄鉱電極の価電子帯の正孔(少数キャリヤー)による過程の電流に対する寄与が大きいためと考えられる. ターフェル領域及び電位の小さい領域の各々における支配方程式を用い, IP効果に関係するパラメータの一つである交換電流密度を試算した。
|
52) 電気探査IP法における黄鉄鉱の電気化学的研究 | ||||
○菱田 元(1),高倉 伸一(2),上田
匠(1) 1:早大,2:産総研 |
||||||
11月18日 | 11:20〜11:40
本研究では、長大測線での効率的な多チャンネルIP法電気探査のための電位受信システム開発、及び同システムの潜頭性黒鉱鉱床への適用を行った。Dipole-Dipole法によるIP法電気探査では、多芯ケーブルシステムを用いることで、電極隔離係数(n)の異なる複数の電位電極組み合わせによる多チャンネル同時計測を実施することが可能である。しかし、数100mを超える長大測線において従来の多芯ケーブルを使用することは、総重量が大きくなりがちであり、ケーブルそのものにかかるコストも小さくない。本研究では、LANケーブルと小型のスイッチボックスによる軽量・安価な多チャンネル電位受信システムを作成した。8芯のLANケーブルにより、1回の電流送信で最大n=7のデータを同時取得することが可能である。本発表では、上記システムの開発に加え、国内の潜頭性黒鉱鉱床においてシステムを適用し、時間領域IP法電気探査(電極間隔50m、測線長700m)を実施した結果について報告する。
|
53) 長大測線における効率的な多チャンネルIP計測手法の開発と潜頭性黒鉱鉱床への適用 | ||||
○小森 省吾・梅澤 良介・高倉 伸一(1),村北
貴郁・杉崎 真幸・荒井 英一(2),志賀信彦・原田誠・石川秀浩(3) 1:産総研,2:JOGMEC,3:MINDECO |
||||||
11月18日 | 11:40〜12:00
異なる固結度、孔隙内の氷粒子分布、および周囲温度を持つ部分凍結した多孔質媒体における弾性波の分散と減衰の特性をシミュレーションするための統一岩石物理モデルを提案する。このモデルでは、氷状部分と砂状部分に分かれる骨格形成の段階において固結係数を導入し、さらに別の分配係数を定義して、孔隙内氷粒子の砂粒子に対する浮遊状態と支持状態を区別することができる。また、観測されたS波減衰異常とのより良い一致を達成するために、3つの異なる減衰メカニズムで温度依存の影響を考慮する。それらは、水膜の厚さの変化による氷粒の粘弾性挙動、不凍水の含有量の変化、細孔流体の粘度変化である。特に、Burgers 構成方程式を使用して、氷マトリックスの複素弾性率を導出する。この式では、周波数非依存の Q 仮定を使用したアレニウス理論によって、温度に依存する定常状態のクリープ速度が構築される。
|
54) A Temperature-dependent Rock Physics Model for Partially Frozen Sediments | ||||
○Bonan Li(1),松島 潤(2) 1:南京工業大学、東京大学,2:東京大学 |
||||||